ヨガの脳への効果は?脳卒中・脳梗塞の予防や後遺症緩和に効果はあるの?

ヨガは心身を鍛錬する訓練であり運動ですが、「心」への影響があるということは、つまりは「脳」にも影響があるということなのでしょうか。またその話をさらに推し進めてヨガによって脳卒中の後遺症が緩和されるという話がありますが本当でしょうか。ここでは、そのようなヨガの脳に対する効果について解説していきます。

ヨガの脳に与える効果①「幸福感を高める」

ヨガをするとアナンダマイドが分泌される

ヨガや瞑想が、骨格を矯正し、肩コリなどを改善し、ダイエットもできるという肉体面の効果はよく知られています。

またヨガを少し勉強した人や実践した人なら、ヨガには更にストレス解消、リラックスなど精神面の効果があることもご存知でしょう。

この精神面で気持ちよくなったり、リラックスしたり、更には幸福感を抱いている時の、その感覚の元である脳では「アナンダマイド」または「アナンダミド」という物質が分泌されていると言われています。

ではそのアナンダマイドとはどのような物質なのでしょうか。

アナンダマイドとは「幸福物質」

アナンダマイドの語源は、ヨガという言葉の語源と同様に、サンスクリット語です。サンスクリット語で歓喜、祝福を「アーナンダ」というのです。

アナンダマイドは別名「幸福物質」とも呼ばれ、これが脳で分泌されている時には幸福感や高揚感を抱くことが知られています。

こう書くと非常に特別な物質のようですが、実は原料はアラキドン酸という必須脂肪酸で、アラキドン酸は牛肉や豚肉の脂肪の中にも含まれているほど、人間にとって身近な物質です。

ですから「なんだかしあわせな気分だな」と思っている時には、脳内ではアナンダマイドが分泌され、幸福成分効果を発揮しているのです。

ヨガをするだけで幸福感が高まる

ヨガや瞑想などを行うと、このアナンダマイドの分泌が促進されると言われています。

ですから、ヨガや瞑想を行うことで、緊張感や不安が解消されるだけではなく、1歩進んで幸福感でいっぱいな気分になるのも、またヨガと瞑想のもたらしていることなのです。

ヨガの脳に与える効果②「θ波が出て集中力が高まる」

もう1つのヨガが脳に与える効果には「θ波」という脳波を発生させることも挙げられています。

θ波とは

脳波には、γ(ガンマ)波、β(ベータ)波、α(アルファ)波、θ(シータ)波、δ(デルタ)波と5種類あり、それぞれその人の置かれてる状況や環境によってある脳波が特別に多く発生してます。

簡単に説明すると、

  • γ波:不安を感じたり興奮したりするときに発生
  • β波:緊張したりストレスを感じている時に発生
  • α波:心身ともに安静状態にある時に発生
  • θ波:深いリラックス状態にある時に発生
  • δ波:熟睡している時に発生

です。

この中でθ波は「まどろみ波」とも呼ばれていて、ヨガにおいて瞑想している時や、目覚めている状態と眠る時の「夢うつつ」の状態の時に発生します。

同じような脳波にα波がありますが、α波は安静状態からリラックスして、意識をもうろうとさせる傾向があります。

一方で、θ波はまどろんでいながら、脳の働きは明晰になって、読書や勉強に集中できたり、普段なら思いもつかないアイデアが浮かんだり、今まで迷っていたことの答えを発見できたり、といったことをもたらします

θ波の効果とは

なぜθ波にこのような効果があるかというと、θ波は脳の中で記憶や高度な空間学習能力をつかさどっている海馬という部位から発生しているからです。

したがって、瞑想することでθ波が発生すると、上で挙げたような、頭脳の明晰化、集中力のアップ、無意識下にあった考えの意識化などの効果があるのです。

それ以外にもθ波には効果があります。

それはθ波が発生するような状態に脳があると、θ波の発生元である海馬の近くにあって血圧、ホルモン分泌、体温調節をコントロールしている脳幹や小脳が大きくなることが実験で判明してます。

したがって、θ波が発生していると、相乗的に自律神経の不調なども改善する効果があるのです。

さらにはθ波が発生すると海馬は成長するので、記憶力が良くなったり、場合によっては初期の認知症などの症状が緩和する効果もあると言われています。

ただし逆に、過剰で持続的なストレスを受けると、β波が出る一方で、θ波の発生元の海馬がやせて小さくなっていくことも実験で確認されています。それは集中力や記憶力の低下だけではなく、認知症も誘発します。

θ波は瞑想することで発生させられる

従って、健やかな脳の状態を保つ、あるいは自分の自覚している以上の自分の脳の力を発揮させるためには、このθ波を発生させるのが最適な方法のうちの1つなのです。

しかし、ではどのようにしたら意図的にθ波を発生させられるのか、という点については実はまだ科学的な回答が出ていません。

ただ、瞑想中の僧侶の脳波から多量のθ波が計測された、という実験がありますので、やはりここまで挙げたようにヨガの中で瞑想を行うことはθ波の発生を促すということは言えそうです。

ヨガの脳に与える効果③「脳卒中後遺症改善」

更には、ヨガの脳に対する「効果」というよりは「医療利用」に近いものとして、脳卒中の後遺症の改善が挙げられています。

ヨガで脳卒中によって失われた平衡感覚が回復

これはアメリカのルードブッシュ退役軍人局医療センターのArlene A. Schmid氏らの行った実験結果を、アメリカの医学誌「Stroke」に発表したことで明らかになりました。

具体的な実験の内容は、脳卒中の発症から6カ月以上経過した慢性期の脳卒中患者47人を

  • 週2回のグループヨガを8週間行うグループ
  • 週2回のグループヨガに加えて、週3回以上リラクセーション音源を聴くグループ
  • ヨガを行わず、通常の医学的ケアのみを行うグループ

に分けて8週間後の経過を見たところ、ヨガを行った2つのグループでは、実験前と比べて平衡感覚が改善し、転倒への恐怖心が薄れたということが統計的に明確になった、というものです。

Stroke: Poststroke Balance Improves With Yoga

脳卒中、脳梗塞の予防にも

また脳卒中発症後の症状改善だけではなく、その予防にもヨガは役に立つと言われています。

その理由は以下の通りです。

「心房細動」という心臓の中の心房という部分を収縮させる電気信号が乱れ、拍動が速くなる症状が発生すると、脳の血管が詰まり、脳卒中や脳梗塞を発症させる危険性が高くなります。

しかし、ヨガをすることでその心房細動が防げるからです。

なぜヨガが心房細動を防げるかというと、以下の理由が挙げられています。

1つはヨガが自律神経のうちの副交感神経を優位にし、身体をリラックスさせるために脈が安定し、心房細動の発症を予防できる、という点です。

2つめはヨガによって背骨のゆがみが矯正されると、心臓への圧迫が弱まり、それによって心臓の負担が減って、心房細動の発症の確率が下がるという点です。

3つめはヨガによって血行が促進されると、心臓が拍動して動脈を通じて血液をを送り出すリズムが安定し、心房細動などの不整脈を引き起こすことを防げるという点です。

このヨガの心房細動予防効果についても、スウェーデン、カロリンスカ研究所による実験結果があります。

実験内容は、発作性心房細動患者80人をヨガグループと何もしないグループに分け、ヨガグループは病院において12週間×週1回のヨガを1時間行ったものです。

その結果は、ヨガをしたグループの方がしないグループよりも心拍数や収縮期血圧と拡張期血圧が低いなど、心房細動のリスクが減っていました。

この実験からもヨガの心房細動予防効果は証明されているのです。

SAGE journals: Effects of yoga in patients with paroxysmal atrial fibrillation – a randomized controlled study

ヨガは脳の健康にも効果的

いかがですか。

ヨガが心身ともに健康な状態にすることはよく知られていますが、脳の健康にも効果があるということは驚きではないでしょうか。

脳についての研究はまだ途上ですので、明確にメカニズムがすべて解明されているわけではありませんが、事実を見ていくと、このようにヨガが脳の健康に効果的、ということが分かってきているのです。

ですからいつまでもしっかりした脳の働きを保ちたい人はぜひヨガをすることをおすすめします。

*参考文献
http://stroke.ahajournals.org/content/43/9/2402 http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1474515116637734

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旅、蕎麦と酒(全ジャンル)、落語、そして猫をこよなく愛する大阪在住ライターです。
最近は肩こりがさらにひどくなり、デスクでPCに向かいながら上半身ヨガで何とかしのいでいる日々。
しかしそのおかげで左半身のだるさが取れました!