もくじ
臨床心理士
資格
臨床心理士、公認心理師、マインドフルネススペシャリスト
なりたい姿とありたい姿の違い
よく「なりたい姿」「ありたい姿」という言葉を聞きますが、この違いを皆さんは知っていますか?
なりたい姿とは
「痩せてキレイになりたい」「資格試験に合格して○○の資格が欲しい」
このように、今の自分は手に入れていないけれど、これからほしいと望む自分がなりたい姿です。
多くの人はどのようなことだとしても、持っているものかもしれません。
しかし、実際に手に入れた人はどのくらいいるのでしょうか。なかなか目標達成のための行動が続かず、挫折した人もいると思います。
それは人という生き物は「楽な方向」や「すぐに手に入れられるもの」に目が向きやすくなるからです。
たとえばダイエットして「-5キロ」を目標にしたとして…痩せたい気持ちはあるけど、目の前においしそうなお菓子や食べ物があれば食べたくなりますよね。意志が弱いというよりも、本能的に人はどうしても楽な方や手に入れやすいものを求めてしまう。
なりたい姿とは、理想や目標である一方で自分が不足している認識しているものを補った姿なのです。
ありたい姿とは
ありたい姿とは、具体的な状態を指します。
たとえば、「痩せてキレイになって、○○のワンピースを着たい」「資格試験に合格して、○○の資格を取って△△で困っている人の役に立ちたい」など。
なりたい姿は少し捉え方を間違えると、自分の不足をとことん否定してしまったり、「○○であるべき」とあるべき姿で捉えてしまいます。そうするとどうでしょう?
望んでいるはずなのに、強制されている感覚になり、なりたい姿になれない自分がダメだと感じやすくなりませか?
どんな人でありたいのかを具体的にイメージし、そのために必要なものは何かを突き詰めた先にあるのがありたい姿です。
どちらも同じくらい必要
しかし、なりたい姿もありたい姿もどちらも大切です。
なりたい姿があるからこそ、自分がどのようなことを求めているのかが見えてきます。まずはなりたい姿を想像し、その姿が他人軸ではないか考えてみるといいかもしれません。
たとえば、「痩せてキレイになりたい」の理由で考えてみましょう
・彼に太っていると言われたから
・○○ちゃんは痩せていてきれいだから
・痩せてキレイになれば彼氏ができる・結婚できるから
・サイズダウンしてMサイズの服が着たい
・肌荒れになりにくい体質になりたい
・自分の体をもっと好きになって堂々と過ごしたい
みなさんはどっちの理由になりやすいですか?
自分軸の「痩せてキレイになりたい」はありたい姿なのです。
なりたい姿は今の仕事やキャリアプランにも必要
キャリアプランを考える際に、なりたい姿は重要です。
特に就職や転職活動の面接では「なりたい社会人像」「なりたい将来像」を聞かれることは多いでしょう。
仕事への意欲や、会社とのマッチ度を客観的に評価するためにもこれらの質問は定番。
しかし、この質問にも実は「なりたい姿」の先の「ありたい姿」を求められているときがあります。
理想を抽象的に語るだけでは、「この人はどんなことができるんだろう」「この人は具体的に何がしたいのだろう」ということが伝わりません。
また、今の仕事でどのようなキャリアを積んでいきたいか考えたり、フリーランスや起業を目指す際も「なりたい姿」とその先の「ありたい姿」を考える必要があります。
ありたい姿が思いつかない人こそ、まずは「なりたい姿」が重要なのです。
将来の自分を明確にしよう~なりたい姿・ありたい姿~
具体的に、なりたい姿とありたい姿を考えていきましょう。
達成のために必要な目標設定の方法とは
ありたい姿やなりたい姿を叶えるためには、ただ願っていても叶いません。
叶えるためには目標設定の仕方が重要となります。
モチベーションの心理学の観点では、目標設定の方法が本人のやる気や結果に影響しているといわれています。
達成目標理論では、目標を「熟達目標」と「遂行目標」の2つにわけました。
遂行目標・・・人からの賞賛や評価を得たい、もしくは低い評価や失敗を避けたいとする目標
とある実験を行ったところ、熟達目標を持っている人の方がモチベーションをある程度維持して、物事に取り組み続ける傾向があることがわかっています。
このほかにも、動機付け理論には「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」がありますが、こちらも内発的動機付けを持っている人の方が継続力があるという研究結果が多いのです。
外発的動機づけ・・・外側に反応などを求めるもしくは、反応を避ける
このように、目標設定をする際には「自分の内側からくる動機」や「具体的なイメージ」が重要となるのです。
加えて「叶えられる可能性があるか」がカギを握ります。
そこで重要なのが「細かな目標・小さなゴール」です。心理学ではスモールステップと表現します。
具体的だけど10年後にしか叶えられない目標を立てて、10年間頑張れるかというとなかなか難しいですよね。
なので、もっと細かい小さな目標も大事になってくるのです。
・具体的な目標を立てる
・その目標は自分軸(熟達目標や内発的動機づけによるもの)が望ましい
・小さなステップもたくさん用意しておく
なりたい姿の考え方
ではさっそくまずは、「なりたい姿」の考え方を3つ紹介します。
なりたい姿の考え方①DO思考とBE思考で考える
義務感やあるべき姿、やらなければならないことから発想する考え方が「TO DO思考」。
一方で、やりたいことなど積極的な行動を促すことにつながる考え方を「TO BE思考」。
やりたいことがわからない人は、先に「TO DO思考」で自分の理想の姿を考えてみましょう。
叶うか叶わないかは一旦置いておいて、「こうなりたい」「ああなりたい」と想像するのです。
まずは「TO DO思考」と「TO BE思考」のどちらからでも自分のやりやすい方から考えてみましょう。
なりたい姿の考え方②10年後の理想の自分を想像する
なりたい姿を考えるなら、先の未来について想像するのもおすすめ。
たとえば、10年後の自分がどうしていたいか…。
もし10年後は長いと思えば、1年や3年、5年など想像しやすい未来で大丈夫です。
ここでもコツは「こうなったらいいな~」という理想でOK。
抽象的な思いから、本当に叶えたいのかを考えたり、具体的な目標を立てていきましょう。
なりたい姿の考え方③憧れの存在や生活をイメージする
好きな芸能人や憧れの生活からなりたい姿を想像するのもいいですね。
なりたい姿をイメージするだけなら、叶う叶わないは一旦置いといて大丈夫です。その際、もっと具体的に考えていくなら「なぜ憧れるのか」を自問自答してみましょう。
芸能人の○○みたいになりたい!と思っている女性でも、○○みたいに足が綺麗になりたい人もいれば、笑顔が素敵になりたい人もいます。具体的ななりたい姿をイメージしましょう。
ありたい姿の考え方
次に「ありたい姿」の考え方です。ありたい姿は具体的かつ自分に意識が向く形となります。
ありたい姿の考え方①自分の大切にしたいことを考える
みなさんが大切にしたいことって何ですか?
家族、恋人、子ども、仕事、プライベート、推し活、自分の健康…など、一人ひとり大切にしたいことは違いますよね。
ありたい姿を考えるときは、誰かの基準なんていうものは置いといて、自分の基準で考えます。
「反対されたら」「馬鹿にされたら」「できないといわれたら」
それは相手の価値基準。他人軸です。
自分が本当に何がしたいか、何を大切にしたいかを考えてみましょう。
ありたい姿の考え方②やりたくないことを書きだす
もし「TO DO思考」を考えて、「どうせ叶わない…」と思いそうな人は、「やりたくないこと」を考える逆算思考で考えるのもおすすめですよ。
やりたくないことを考えているうちに、自分のやりたいことが見えてくるかもしれません。筆者は満員電車に毎日乗りたくないという思いから、今の働き方にたどり着きました。
参考:pha しないことリスト (だいわ文庫) 大和書房(2018)
ありたい姿の考え方③幸せな気持ちになるリストを作ってみる
やりたいことリストや叶えたいことリストのような感じで、自分が幸せな気持ちになるリストを作ってみましょう。
たとえば、「○○が美味しい店に行く」「ラベンダーのアロマを買って使う」など、より具体的なものを書けるといいかもしれません。
それこそが「TO BE思考」、ありたい姿。
リストは書くだけでなく、定期的に見返すことで「美味しい店に行くために予定を開けよう」など、目標を実現させるための手段を考えるようになりますよ。
もしくは本当はやりたいことやありたい姿が違うこと、変化していることに気づく場合も。
書いてリスト化することは、目標達成のための手段と気づきにつながるのです。
なりたい姿・ありたい姿がわからないときは?
ここまで色々と解説しましたが、いざ書き出そうと思っても「なりたい姿」「ありたい姿」が思い浮かばないこともあるでしょう。
最後に思い浮かばないときのヒントを紹介します。
YouTubeやネットの検索履歴を見てみる
YouTube動画やネットの検索履歴は、あなたが今求めているものである可能性が高いです。
たとえば、痩せたいならダイエットに関する情報や美容系YouTuberの動画を多く見ているかも…。
また動画やネット検索をあまり使わない人は、SNSや本などでもいいでしょう。
普段、自分が無意識に興味を持っているものや注目しているものこそ、みなさんが手に入れたい「ありたい姿」「なりたい姿」のヒントかもしれませんね。
周りの人の目標や価値観を聞いてみる
人と話すことで刺激を受けたり、新しい発見をするタイプの人は、周りの人の価値観や考え方に触れるといいかもしれません。
話しているうちに、自分がやりたいことに気づいたり、人の目標から発展して自分の欲しいものが見えてくることもあります。
もしくは、あなたに対するイメージなどを聞いてみるのも面白いでしょう。
ただし、人からの刺激を受けて「自分なんて…」と思ってしまう人はこの方法はおすすめしません。
カウンセリングやコーチングを受ける
カウンセリングは心の病気を持つ人だけのものではありません。
自己理解や自己分析のためにもカウンセリングは役に立ちますよ。特にオンラインサービスなら、その手の話題に長けているカウンセラーも多くいます。友達に話すのとは違い、自分のことだけを深堀できる時間なので、「じっくり誰かに話してみたい」「考えを整理したい」「専門家の意見も欲しい」という人にはおすすめです。
一方で、コーチングもみなさんの目標設定の力になってくれます。
コーチングはカウンセリングよりも認知度は低いようですが、目標達成のための気づきや行動を促す心強いサービスです。
カウンセリングとコーチングの違いの1つは扱う話題。
もしも皆さんが「不安や心配があって目標設定ができない」「過去の失敗を引きずっている」けど、自分の目標を見つけたい・達成したいのであれば、カウンセリングの方がいいかもしれません。
一方で不安や心配はなく、「なりたい自分を実現させるための方法を考えていきたい」と未来に対して前向きな気持ちがあるのならコーチングの方があっているでしょう。
なりたい姿もありたい姿も自分らしくが大事!
なりたい姿がだめで、ありたい姿の方がいいというわけではありません。
どんな理想像であっても、人からの評価を求めたり恐れるのではなく、自分がどうしたいか・どうなりたいかを大事にしていきましょう。
自分らしさがわからない人も、今はまだ気づいていないだけです。
今回の記事を参考にしながら、自分の「なりたい姿」「ありたい姿」を手に入れましょう!
参考
水間玲子(2002).理想自己を志向することの意味 : その肯定性と否定性について 青年心理学研究,14,21-39
遠藤志乃ほか(2017). 中学生における動機づけ調整方略と達成目標および学習習慣との関連 心理学研究,88,170-176
鈴木義幸 理想の自分をつくる セルフトーク・マネジメント入門 ディスカヴァー・トゥエンティワン(2021)