月経記録は気分や心の変化をメモすることが大切?臨床心理士が解説するPMS対処法

生理前や生理中の不調、女性にとって当たり前…とも捉えられやすいですが、軽減することもできます。今回は少しでも生理不調を軽くするために、今日からできることを臨床心理士が解説します。まずは自分を知って、今ある対処法を活用したり、自分に合う方法を試していきましょう!

監修者
いけや さき
臨床心理士
心理学系大学院修士課程修了後、精神科病院や心療内科クリニック、療育施設などに従事。 「よりカウンセリングとセルフケアを身近に」という思いから、2020年にフリーの臨床心理士としてオンラインプラットフォームや個人サイトを通してオンラインカウンセリングを開始。主に20~40代女性のカウンセリングを担当。現在は女性が生きやすい世の中を目指し、ライターとしても情報提供を行っている。

資格
臨床心理士、公認心理師、マインドフルネススペシャリスト

生理前・生理中の悩みを我慢している女性は6割

みなさんは毎月やってくる生理にどんなお悩みをお持ちですか?
心身の不調を感じていても、「仕事しなくちゃいけないから」「家事や子育ては休めない…」と思って、無理にがんばっている女性もいらっしゃるかもしれません。

日経BP「生理快適プロジェクト」の調査によれば、生理による心身の悩みを抱えていても、我慢している女性は6割程度いることがわかりました。そのなかでも生理休暇の制度があることは認知しつつ、実際に活用している人は1割未満のようです。

申請しにくい理由には個人的な内容以外に「生理への理解不足」「言いにくい・申請している人が少ない」「不快な症状をサポートする制度はない」という企業の状況が背景にあるとされ、仕事に影響がありつつも日々仕事をがんばっている女性が多いことがわかります。

働く女性と生理休暇について|厚生労働省,雇用環境・金当局雇用機会均等課,2023.9.28
日経BP 総合研究所 メディカル・ヘルスラボ 生理快適プロジェクト│20~40代「働く女性1956人の生理の悩みと仕事と生活」調査(完全版)

月経は女性の仕事や家事の効率に影響する

日経BPの調査結果によれば、仕事への影響は主に「効率が落ちる(75.4%)」「ミスが増える(27.8%)」「コミュニケーションがうまくいかない(17.4%)」のほかに、「つらくて休む(24.2%)」「重要な業務で力を発揮できない(10.4%)」などがあるとわかりました。

休暇のみできても、また来月同じような症状になるくらいなら、我慢してでも仕事に行く女性の方が多い現状がよくわかる調査結果ですよね。

また、令和4年の厚生労働省の調査によると、「プライベートの予定をあきらめた(40.1%)」「家事や育児、介護などが集中できない(35.7%)」など仕事以外にも影響が出ていることもわかっています。しかし、こんなにも様々なところで影響がありながらも、女性同士でも生理のことを理解し合えないことは非常に多いそうです。

同じ生理痛でも、痛みの出現頻度や強度が異なったり、市販薬服用で落ち着く人もいたり、ほとんど生理の悩みがない女性もいるため、男女間だけでなく女性同士でも理解が難しいのかもしれません。だからと言って、今のままではつらいですよね。

実際に生理の悩みが軽減したことで、仕事への意欲が向上し、職場へのエンゲージメントも高いことがわかっています。そこで、ここからは生理の悩みを軽減させていくために今日からできる方法をご紹介します。

『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に%20関する調査」の結果|厚生労働省,2022,p8
日経BP 総合研究所 メディカル・ヘルスラボ 生理快適プロジェクト│20~40代「働く女性1956人の生理の悩みと仕事と生活」調査(完全版)

月経の悩み解決に”記録”をつけよう

生理で悩んでいても、何をしたらいいかわからず「何もしていない」女性が多いといわれています。確かに何をしたらいいかわからないですよね。そこでまずは自分の状態を把握するために“記録”をつけることをおすすめします!

月経周期を知る記録

月経周期は25~38日が正常とされています。みなさんの周期はどうでしょうか?もし前後していている場合は、専門機関に受診してみてくださいね。

すでに月経周期の記録をつけている人はいるかもしれませんが、PMS体調記録シートやアプリなどを活用することで、自分の1ヶ月の状態だけでなく、長期的な傾向を客観的に把握できます。

また、月経周期を把握することで自分の「卵胞期」「排卵期」「黄体期」がわかります。生理中も含め4期のことを、「月経期」「キラキラ期」「ニュートラル期」「アンバランス期」と分け、気持ちや体の不調として起こりやすいことと共に表現しているなど、自分の状態を理解するヒントを得られるようになりますよ。

▷月経期(生理開始~7日目)
基礎体温が低温状態に入り、むくみや生理痛、そのほかにも腰痛などの不調が現れやすい時期。日頃できていることが難しくなっても、今は一旦「ゆっくりする時期」と思いながら過ごしましょう。

▷キラキラ期/卵胞期(生理開始8~14日目)
エストロゲンが多く分泌される時期です。だいたい生理が終わりそうな頃からはじまります。キラキラ期と呼ばれる理由は、副交感神経が活発になり気分が安定するから。身体や心が月経期よりもラクになって、さまざまなことにやる気を持ったり、髪や肌に潤いも出やすいといわれています。

▷ニュートラル期/排卵期(生理開始15~21日目)
排卵日以降、高温期に入る時期です。比較的、心も身体も穏やかに過ごせるのでこの時期が一番「安定している」と感じやすい女性も多いでしょう。しかし、高温期へ移行することによってホルモンバランスが急激に変化するため、徐々に不安定になる人もいます。

▷アンバランス期/黄体期(生理開始22~28日目)

プロゲステロンの影響で、落ち込みやイライラ、肌トラブルも起きやすく、不調になりやすい時期です。眠気もしくは不眠に悩む人も多いとされています。精神症状や身体症状には個人差がありますが、周りと比較せず、自身がつらいと思ったら早めに受診しましょう。

参考:月経周期と女性ホルモンのリズム |健康管理検定 :文部科学省後援
月経周期 - 22. 女性の健康上の問題 - MSDマニュアル家庭版

気持ちや体の状態を知る記録

月経周期だけでなく、生理の悩み軽減には気持ちや体の状態を知ることも重要。

どんな時期にどのようなことでイライラしやすいか、不安になりやすいか、やる気が起きなくなるか、食欲増進や不眠・過眠などはあるか、それらの症状の出現のきっかけや時期を知っていると対策も考えやすいですよ。メモを取るのが億劫な人や、忙しくて難しそうな人はまずはアプリで簡易的に記録したり、スケジュール帳にマークを付けるだけでも客観視の材料が増えていきます。

無理のない範囲でできることから記録していけるといいですよね!

記録項目例
・日付や天気、気温
・基礎体温
・心の変化(イライラ、不安・心配、調子いいなど)
・体の変化(腹痛、頭痛、めまいなど)
・その日の出来事

※認知行動療法では、気分の記録を数値化する方法などを実施しています。言葉で表すのが難しい、もしくは記録を取るのが続くか心配な人はまず数字やマーク、シールなどで簡易的な気分の記録だけでもとってみましょう。

記録の取り方はさまざま

さまざまな機関や企業が、PMS対策につながる月経記録ツールを公開しています。
主に「紙類(ノートや日記含む)」「アプリ」の2つが記録方法として有名です。 自分がどのツールなら記録を取りやすいか試しながら取り組んでみてくださいね。

<紙類の一例>
PMS体調記録シート | PMS(月経前症候群)ラボ
PMSセルフケア(PMSノートをつけてみよう) - テルモ|基礎体温でカラダと話そう
ダウンロードツール|生理痛と女性のからだの悩みに関する総合情報サイト「生理のミカタ」

<アプリ一例>
ルナルナ
ソフィ 生理日管理&生理不調ケア
ケアミー

ご自身で手帳や日記などにつける場合も、記録のつけ方は各サイトを参考にしてみましょう!

これからの時代は「フェムテック」

PMSや生理前・生理中の不調対策として、フェムテックやフェムケアの知識もつけておくのがおすすめです。
矢野経済研究所の調査によれば、2023年9月時点でフェムテックの日本における認知度は7.1%とわかりました。前回調査よりも1.3ポイント上昇しているため、徐々に認知度はあがっています。

ここからは、これから女性の身体や心、仕事やプライベートにおいても知っておくといい知識「フェムテック」について説明します。

フェムテック・フェムケアとは

フェムテックとは「Female(女性)」+「Technology(科学)」の造語。月経・生理に限らず、女性のライフステージにおけるあらゆる身体や心の変化を解決に導く商品やサービスなどの総称です。

月経以外だと、妊活や妊娠期、産後、プレ更年期や更年期などの悩み解決に向けたサポートも期待されています。企業や自治体でもサービスや制度を導入するところが急増していて、女性だけの課題と捉えず、国や世界全体で解決のために動き出しているようです。

一方でフェムケアとは「Feminine/Female」と「Care」の造語。フェムテックは科学技術の活用を主としていますが、フェムケアは女性の健康のケアをするためのサービスや製品を指します。技術側面よりもケアを重視するサービスでは「フェムケア」と表現して棲み分けしていることもあるようです。

専用商品で身体を大事にする

フェムテック・フェムケアの商品やサービスのなかで、特に今回は月経に関わるものを紹介します。
ほんの一部ですので、気になった方はぜひフェムテックのことをもっと調べて知ってみてくださいね。もちろん当サイトでも引き続きフェムテックやフェムケア関連の記事は掲載していきます。

・デリケートゾーン専用ソープ
・オーガニックコットンナプキン
・吸水ショーツ
・月経管理アプリ
・骨盤底筋トレーニング
・オンラインカウンセリング/相談サービス
など
参考:Femtech(フェムテック)とは | FemtechTokyo

マインドフルネスもおすすめ

GoogleやAppleなど、多くの企業で取り入れているマインドフルネス。
瞑想や座禅のイメージが大きいですが、マインドフルネスの本来の目的は「今、ここ」に集中することです。自分の意識がどこにあるか、冷静に受け止めていきます。

マインドフルネスにはさまざまな効果が期待されていますが、実はPMSの症状緩和へつながったという調査研究があるのです。その研究結果によれば、マインドフルネスを実践し報告した女性は重度のPMS症状がほとんどなかったということが明らかとなり、PMSとマインドフルネスの関連が認められています。

ほかにも、女子大生を対象とした調査ではマインドフルネスはPMDD症状を低減させることが明らかとなりました。

フェムテックのサービスでもマインドフルネスを取り入れている事業が急増中です。

PMSやPMDDにお悩みの方、生理前に不調を感じやすい女性は日々の生活のなかに、マインドフルネスを取り入れてみてくださいね。最後に、座って行う瞑想以外の方法を2つご紹介します。

<葉っぱのエクササイズ>
自分が河原にいることを想像し、ゆっくり川を眺めてみましょう。そこに葉っぱが1枚ずつながれてきます。その様子を見ながら、自分の頭のなかにある考えや気持ちに意識します。
その考えや気持ちを1つずつ葉っぱに載せ、それらが流れていく様子をイメージする方法です。実際に川のBGMを流すと想像しやすいかもしれません。

<飲む瞑想>
特に香りのよい温かい飲み物がおすすめです。
まずコップ(カップ)を観察し、手に取って温かさを感じます。その後、香りを嗅いだら一口飲みます。舌全体で飲み物の味を楽しみ、静かにコップを置きます。飲み物を通して、五感を使い、気持ちを穏やかな状態へと連れていってあげる方法です。ゆっくりと味わうイメージで取り組んでみてくださいね。

参考
深町 花子ほか.女性アスリートにおける月経観、マインドフルネス、および月経関連症状の関連,日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 p2-7
山口 有貴子ほか.女子大学生におけるマインドフルネスが月経前不快気分障害(PMDD)症状に及ぼす影響―痛みに対する破局的思考を媒介として,日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 p2-9
疲れた脳をリフレッシュ 「すきま瞑想」のススメ|日本経済新聞 2019年5月29日

今と未来のために、記録を活用しよう!

月経に関する悩みは、多くの女性が多かれ少なかれ一度は経験するものかもしれません。
これ以上つらくならないように、そして今は平気な人も今後つらくならないようにするためにも、今回紹介した方法で記録を取りながら、PMS・PMDD対策をしていきましょう。

心理カウンセラー(臨床心理士・公認心理師)
医療・福祉施設勤務を経て、フリーのカウンセラー・ライターとして活動中。

“心と身体はつながっている”という考えのもと、女性たちが穏やかで自分らしいライフスタイルを手に入れるためのカウンセリングや情報提供しています。

わたし自身も外側と内側の両方の健康を意識し、運動を意識するほか、最近では漢方や薬膳、食生活に関する分野を勉強中です♪

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