「ファストファッション」の裏にある事実と解決策とは?私たちにできることから

ファストファッションとは、最新の流行を取り入れた商品を定価価格で売り、短期間のサイクルで生産、販売するファッションのことです。ファストファッションの裏には、トレンドアイテムのコピー問題をはじめ、クオリティの低い品質が売られる問題、労働力問題(人権問題)、環境問題などが隠されています。いま私たちに求められている行動は、スマートな買い物を心がけることです。

ファストファッションとは?

最近「ファストファッション」という言葉をよく聞きますが、いったい何なのでしょうか。

ファストファッションとは、最新の流行を取り入れた商品を定価価格で売り、短期間のサイクルで生産、販売するファッションのことです。

20世紀なかばまでは、新しい服は春・夏・秋・冬と季節のサイクルで作られていました。デザイナーたちは、何カ月も先にシーズンごとのデザインを考えて、消費者が求める服を作っていたのです。しかし今日、ファストファッション業界ではデザインのペースを急激に早めるとともに、商品のコストを落とすようになりました。毎週、新しい服が入荷されているお店をみたことがあるのではないでしょうか。500円で売っているトップスに出会ったことがある人もいると思います。

ファストファッションの問題点は数多くあります。トレンドアイテムのコピー問題をはじめ、クオリティの低い品質が売られる問題、労働力問題(人権問題)、環境問題などがあげられます。

ファストファッションの裏にある事実

まずは、ファストファッションの問題点をくわしく見ていきましょう。この問題は、一言では語れないほど大変複雑です。

最低賃金のみ、もしくは以下で働かせられる縫製員

出典:BBC News

ファストファッション業界の縫製工場で働いている労働者の健康状態は、危険にさらされ続けています。長時間労働、非衛生的な環境での労働、そしてしばしば身体的虐待によって危険な目にあっているのです。

ファストファッションの服を作る人々のほとんどは、長時間労働しているうえに最低賃金ぶんのお金しか支払われず、その日暮らしのぎりぎりな生活をしています。ほかの選択肢がほとんどないために、このような劣悪な環境で働くしかないのです。

安い服を売るために、おさえられるコストは労働力です。布地の価格はどこもほとんど変わらないため、安い服を作るために減らすコストは労働者の賃金になるのです。服の安さは、安価な縫製工場で働く労働力の上に成り立っているといえます。

バングラデシュの縫製工場の事故

出典:The Independent

コストカットは労働者の賃金だけではありません。縫製工場の設備管理や安全管理などに使うお金もカットされているのです。バングラデシュの工場は、建物の管理をおろそかにしているため、建物のほとんどが非衛生的です。建物の管理をおこたっているため、バングラデシュの首都ダッカでは、老朽化した工場の崩落事件が数多く起こっています。

2002年にはダッカの工場が崩落し、64人が死亡、70人以上が負傷しました。この悲惨な事件が起きたあとの2010年にも、ダッカの工場が火災により27人の死亡者をだしています。2015年には縫製工場の入ったビルが崩壊し、1000人以上の労働者が亡くなりました。

環境破壊問題

ファッション業界が生み出しつづけている環境破壊は、おもにファストファッションによるものです。ほとんどのファストファッションの製造には、有毒な化学物質、危険な染料、合成繊維が使用されています。これらは衣服を製造している工場や家庭の排水溝から海へと流れ出して、環境を汚染しています。

さらに縫製工場で働く人々は、つねに有害な化学物質に暴露されつづけており、深刻な病気にかかる危険性にさらされています。

ファストファッションは水を多く使用します。1枚のTシャツを作るのに2700リットルもの水を必要とします。多くの国では飲料水にさえアクセスできない人々が数多くいますよね。ファストファッションに使用されている水があれば、1年間で1億1,000万人の渇きを癒やすことができるといわれています。

ファストファッションの製造工程だけが環境に悪いのではありません。ファストファッションブランドの服は、廃棄されることが多く、大量のごみを生み出すという点でも環境に悪いです。

ファストファッション製品は品質がよくないため、糸がほつれやすいものもあれば、洗濯をすると穴をあけてしまう服もあります。今は壊れたものを縫って使うことはめったにないので、壊れるたびにゴミ箱の中に移動する服が多いです。

トレンドがすぎると同時に、捨てられる服の量も多いです。安く買えてしまうため、ファストフードでハンバーガーを食べに行くような感覚で、ファストファッションを買う人が多いです。そして安く売れた服は「あまり好きなものじゃなかった」「トレンドは過ぎた」といって捨てられてしまうのです。クローゼットの中に長年眠っていて、1度も着ることがなかった服が捨てられることもあります。

作られる服の量と、捨てられる服の量が増えるたびに、環境は汚染されていくのです。

格安の服が行き着く場所は?

【写真】世界中から集まった服がアフリカに捨てられている

出典:Mail Online

いらない服は捨てずに寄付したり、古着屋さんで買い取ってもらっているという人も多いのではないでしょうか。寄付をした服を再び誰かが着てくれる場合は、捨てられる服の量を減らすことができるので環境汚染を防ぐことができます。しかし、ファストファッションはそう簡単にはいきません。

糸がほつれたり、すぐに破けてしまうような品質の低い服は、再び売られることなく捨てられています。ファストファッション産業が売り出す安くて低品質の服が増えるにつれて、リサイクルショップや古着屋に届けられる服のほとんどが、売りに出せない状況になってきているとのこと。

寄付した服は、アフリカなどの第三世界(発展途上にある国)の人たちが喜んで着ていると思うかもしれません。しかし、品質の下がった服は着られることなく、ゴミとなって彼らの国に投棄されているのが事実なのです。

ファストファッション問題の解決策

ここまで、ファストファッション業界が引き起こす環境問題・社会問題をみてきました。ファストファッションに依存するのではなく、より持続可能な産業に移行するためには、私たちに何が求められているのかを知った上で、解決に向けた行動をとる必要があります。

ファストファッション問題の解決策4つをご紹介します。

1. ファストファッションを購入する頻度を減らす

消費者需要には力があります。もし消費者がファストファッションにお金を費やし続けるのであれば何も変わりません。ファストファッション問題を考える上ででてくる疑問が、「第三世界に暮らす縫製工場の人々の仕事を奪うのではないか」という問い。これに対する答えとして言えるのは、ファストファッションを購入することで、第三世界の人々に仕事を与えていることにはならないということ。

世界中の人々がファストファッションの購入を減らすことで、ファストファッションブランドは問題を意識し始めて、労働環境をよりよい方向へと改善させる動きが見られることが予想されます。

実際に、The 2018 Ethical Fashion Reportによると、ダイレクトサプライヤーリストを公開している企業の割合は、2017年だけでも26%から34%に増加したそうです。消費者がエシカルな製品を求めたために、ファッション業界が透明性を見せ始めたのです。

また購入者が減ると同時に、ファストファッションブランドは問題を意識し始め、委託する工場をよりエシカルな工場に選びなおすことが考えられます。人々がエシカルな工場でのプロセスを期待しているため、ブランド側も希望に沿ったブランド展開をおこなうことが考えられるのです。

2. トレンドのファッションは追わない

トレンドを追わずに心から好きだと思った服のみを買うことで、購入する服と捨てる服の数を減らすことができます。

トレンドの服を買うことで考えられる問題は、流行が過ぎてしまうとクローゼットに放置され続けるか、捨てられてしまうこと。流行のみを追い続けてしまうと、たまっていく服や捨てられる服が増加する一方になってしまいます。

服を選ぶポイントとしては、3年後も着られる服かどうかを考えること。流行を見越して、長く着られるデザインのものを選びましょう。

またいくらファストファッションではないからといって、服を大量に買うことはエシカルではありません。服を購入するまえにはじっくりと考えるようにしましょう。 

3. 裁縫の技術を身につける

糸がほどけた洋服や、ボディサイズの変化によりフィットしなくなった服をどうしますか。服は捨てられるか古着屋さんに売られるのが一般的だと思います。しかし、それらの服を自分の手もしくはミシンで縫うことで、再び生き返らせることができるのです。

1枚の服を作るまではいかなくても、少し敗れた部分を縫って再利用できるようにする程度であれば、裁縫初心者さんも挑戦できるのではないでしょうか。ファストファッションについて学んでからというもの、裁縫が得意とはいえない筆者も、意識的に壊れたものを裁縫の力で直すようになりました。

使用していたコインケースの生地が破れてしまっていたので縫って再利用できる形にしたところ、なんともいえない感情になりました。縫ったことにより、そのコインケースに対してオリジナリティを強く感じるようになり、もっと大切に使おうと思うようになりました。きっと皆さんも、自分で縫ったものに何かを感じるはずです。ぜひ挑戦してみてくださいね!

4. ファッションレンタルサービスを併用する

「やっぱりトレンドの服は着たい!」という方には、ファッションレンタルサービスをおすすめします。ファッションレンタルサービスの魅力は、なんといってもトレンドの服が借り放題なところ。躊躇(ちゅうちょ)することなく、トレンドのファッションを楽しむことができます。

ファッションレンタルサービスを利用するなら「何度か着たら終わり」といって、服を捨ててしまったりすることもないです。

ファストファッション問題解決には関心があって、かつトレンドのファッションも存分に楽しみたいという方は、ファッションレンタルサービスを考慮に入れてみてはいかがでしょうか。

エシカルな買い物をお手伝いするアプリ「Good on You」

出典:Good on You

ファストファッションを見分けることが難しいときもあります。そんなときにおすすめするのがアプリ「Good on You」。このアプリは、誰もがエシカルファッションを気軽に楽しめるように開発されました。 

「Good on You」はオーストラリアの慈善団体によってローンチされました。1000を超えるアパレルブランドがどれほどエシカルなのかを評価しているため、商品を購入するときに参考になります。

使い方は簡単。ブランド名、ストア名、欲しいアイテムを検索フォームから検索すると、5段階のエシカルレベルが表示されます。各ブランドページに飛ぶと、環境への取り組みや、労働環境に関する詳細を知ることができる仕組みになっています。

さらに関心のある問題をあらかじめ設定することで、あなたの関心にあった問題に取り組んでいるブランドに出会うこともできます。

このようなアプリは、今後も広がりを見せていくことが考えられます。ぜひ「Good on You」のようなアプリを活用して、消費行動から問題の解決に取り組んでみてくださいね!

アプリ「Good on You」

ファストファッションに関する本

ファストファッションについてもっと知りたい方は、本から情報を得てみてはいかがでしょうか。ファストファッションを知る上で、おすすめする本を紹介します。

ファストファッション: クローゼットの中の憂鬱

格安ファッションの裏の問題を、ベーシックからディープな内容まで知るのにおすすめの本です。人々がファストファッションに魅了されるようになった背景や、縫製工場で起きている問題についてなどを学ぶことができます。読み終えたあとは、ファストファッションとの付き合い方を心得ることができるでしょう。

ファストファッション-クローゼットの中の憂鬱

990円のジーンズがつくられるのはなぜ?: ファストファッションの工場で起こっていること

この本では、ファストファッション工場で働く人々や、労働環境の問題がメインで書かれています。ファストファッション工場で働いている人の人権問題に関心がある人や、バングラデシュの縫製工場の崩落事件について知りたい人におすすめする本です。小学校高学年から読める内容になっています。

990円のジーンズがつくられるのはなぜ?: ファストファッションの工場で起こっていること

スマートな買い物を心がけよう

最新の流行を取り入れた商品を定価価格で売り、短期間のサイクルで生産、販売するファストファッション。ファストファッションの裏では、さまざまな問題が絡まり合っています。

安価な値段で手に入る服でも、その裏には深刻な問題があるということを理解しなければなりません。ファストファッション問題を意識してスマートな買い物を心がけましょうね!

Z世代、ハワイアンダンス、ヨガ、国際コミュニケーション学部専攻(卒)元オーストラリア留学生。「誰もが生きやすい世界」をコンセプトに世界各地のカルチャー、社会問題×ライフスタイル、メンタルヘルス×ヨガなどを中心にお届けします!
https://www.instagram.com/chocoray_/